約 220,414 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/824.html
初バトル、七月七日、七夕。 一ヶ月の間、私は数十店の神姫ショップを歩き回った。地元の茶畑が広がるような田舎では流石にショップはないので、電車で一時間、お隣の県の大都市まで足を伸ばしたり、バスで三十分揺られ最寄りの商店街をブラブラしたりした。 というのも、お兄ちゃんが買ってきた神姫、マリーは素体のままで武装やアクセサリは全く無かったからだ。私は特別バトルがしたいというわけでもなかったので、彼女が身に付けるものは彼女に選ばせようとして、彼女が気に入るものが見つかるまでいろんな店を回っていたのだった。 まずマリーはあまり実戦的ではなく、どちらかというと観賞用のウォードレスを選んだ。一応ワンピースのそれは防御力はあまり期待できないものの、フリルの可愛いディティールは全部自動迎撃用のレーザーガンで、また申し訳程度の飛行機能も付いていた。 「すごいすごい!マリーが浮いてる」 ふわふわとドレスの裾を揺らしながら彼女は私の周りを何週か回って見せた。 「便利ですわ」 彼女は私の左肩に着地した。それから私を見上げて微笑む。 彼女の笑顔は完璧、百点満点だと思った。 別の日、彼女はようやく武器を手にした。彼女は先に買ったウォードレスに合わせてその武器――ロンブレル・ロング(L'ombrelle longue)を選んだようだ。 それはどうみても、日傘。日傘(L'ombrelle)って名前付いてるし。武器の性能としては、ライトセーバーとライフルの能力を併せ持つハイブリッドウェポン。ライフルは威力も装弾数も実戦で使えるギリギリのレベル。まあ、早い話がこれもまた観賞用のアクセサリなのだ。 「可愛いよ、マリー」 「ありがとうございます。わたくしもこれで、いつでもバトルが出来るようになりましたわ」 マリーは傘を開いて傾きかけた日差しを遮る。淵の白いフリルが揺れた。 「え?マリーはバトルしたいの?」 左肩に座っていた彼女は私がそう問いかけると、浮き上がって私の胸前にやってきた。私が歩くのと同じ速度で移動し続ける。 「だってわたくしは武装神姫ですのよ?」 「いや、うん、そうだけど。だったらもう少し強そうな装備選んでもいいんじゃない?」 「ダメですわ。時裕様がわたくしは人形型だとおっしゃっていました。ですからわたくしは人形らしく振舞わなければいけませんの」 ああ、そういえば細かい設定は全部お兄ちゃんに任せていたな、と私はぼんやりと思い出した。神姫の性格がCSCの埋め込み方によって変わるといっても、もっと繊細なところはこちらで設定してあげなければいけないらしい。かなりめんどくさそうだったからお兄ちゃんに頼んだのだけれど、正直かなり失敗だったと思う。 「へえ、人形型なんだ」 「はい。人形型MMSノートルダムですわ」 勝手に決められたということを怒るよりも、私はやけに細かい設定に関心していた。 ノートルダムか、と考えると少しにやけてきてしまう。お兄ちゃんらしい名前の付け方だなと思ったからだ。 「でもバトルってどうやるんだろうね」 「とりあえず...ショップ設置の筐体で草バトルと呼ばれる非公式戦ですわ。」 私はふーんと鼻を鳴らしながら早速視線は最寄りの神姫ショップを探していた。 学校帰りの商店街には二店舗、神姫を扱う玩具屋があり、この近くにはそこしかバトル筐体を置いているところはなかった。 「あそこだね」 カトー模型店、商店街の長屋にあるお店としては大きいほうの店構えで、数ヶ月前に改装されたショップだ。もともと地味だった模型店がここまで立派になれるのも神姫ブームのおかげだろう。 午後五時半、私と同じように学校が終わった学生の神姫マスターたちが集まってなかなか賑やかだ。 「やあ、のどかちゃん、いらっしゃい」 「こんばんは、カトーさん」 マリーの装備を選ぶとき、最初に訪れたショップがここだった。お兄ちゃんもここの常連で、店長のカトーさんと顔見知りだということもあって、いろいろ相談に乗ってくれたのが強く記憶に残っている。カトーさんはここにないようなパーツを他の店にはあるからといって紹介してくれたりもしてくれた、いろんな意味でいい人だ。 「マリーちゃんもいらっしゃい」 「ごきげんよう、カトー様」 「ドレスモデルのウォードレスか。なかなか可愛い物を見つけたね」 マリーはスカートの裾を摘み、膝を折って行儀よくお礼をした。 「今日はお兄ちゃん、もう来ました?」 「時裕君?いや、そういえばまだ見てないなあ」 そうですか、と言って私は、私と同じ学校の学生服を着た男の子たちによってバトルが繰り広げられている筐体のほうへ視線を向けた。 お兄ちゃんは一度この店に足を踏み入れると三時間は出てこないので、もしお兄ちゃんが店にいれば、今日は止めておこうと思ったけれど、カトーさんの言葉を聞いていよいよ心臓がドキドキし始める。 「バトルかい、のどかちゃん」 カトーさんは丸い黒縁眼鏡を掛け直しながら言った。 「はい。初めてなんですけど...」 「そりゃよかった。やっぱり武装神姫はバトルが一番楽しいからねえ。次、席空けてもらうからちょっと待っててね」 そう言ってカトーさんはカウンターから出て、つかつかと盛り上がる一方の筐体のほうへ歩いていく。そして学生服の男の子たちと話始めた。 そのうち何人かが私のほうをちらっとみる。その中に同じクラスの藤井君の姿が見えたので少し手を振った。ただ私に気づいているかどうかはわからなかった。 「緊張するね、マリー」 「大丈夫ですわ。きっと」 少し経って、カトーさんは手招きで私たちを呼ぶ。私は背筋を伸ばして恐る恐る筐体へ向かい、マリーはその後を飛びながらついて来る。途中、やっと藤井君も私たちに気づいたようだった。 カトーさんの横にはこの店では珍しく、女の子が立っている。彼女もまた男の子たちと同じように私と同じ学校の制服、というか私と同じ制服を着ていた。 「丁度いい対戦相手が見つかったよ」 と言ってカトーさんは傍らの女の子の肩をぽんと叩く。 「彼女は先月神姫バトルを始めたばかりなんだ。ね、香子ちゃん」 「よ、よろしくお願いします」 その女の子は右肩に神姫を乗せたまま深々と頭を下げる。当然、彼女の右肩に座っていたジルダリアタイプの神姫は声を上げながらずり落ちた。しかしその神姫は落ちていく途中、一回転してから急に落下を止めて腕を組みながら少しずつ浮き上がっていった。 そしてそれに気づいた女の子が顔を上げて、その神姫のほうを見るまで口を尖らせ続ける。 「あ...!ごめんなさい」 「もう少しまわりに注意してくださいね、マスター」 「ごめんなさい、本当にごめんなさい」 女の子はすっかり私を忘れて彼女の神姫に謝り続ける。その様子をまわりの男の子やカトーさんがくすくすを笑った。 「も、もういいですっ。それよりみなさんが...その...見てますから...」 それが恥ずかしかったのか、女の子の神姫は少し頬を赤らめてどんどん声量を落としていった。 俯きながらちらりと私たちを見て、話を変えて、と訴える。 神姫でもそんな表情をするのか、と感心した私は急いで自己紹介をした。 「えっと、七組の月夜のどかです。こっちはマリー」 「ごきげんよう、マリー・ド・ラ・リュヌですわ」 女の子は思い出したように私たちのほうを見る。 「あ、はい、五組の斎藤香子です」 「ジルダリアのラーレです。よろしくおねがいします」 私の通う高校の一年生は、九クラス三百六十人。私は五組には一人も友達がいない――もちろん偶然だ――ので、彼女とは初対面だったことも納得がいく。 「じゃ、挨拶が済んだところで、早速バトルにしようか」 私も香子ちゃんも、そしてマリーもラーレも、そう言ったカトーさんのほうを向いてはい、と返事をした。 作品トップ | 後半
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/621.html
<主人公> ●ミラ・ツクモ(Mila Tsukumo/九十九 御良)female age 20 浮世離れした天才型大学生にして大学講師。黒い髪の日系三世で、両親は既に他界した。 鳳条院グループが主催する大会で爆弾テロが行われる事を知り、日本に向かった。 UCLAに在学していたが現在は鳳条院家に居候中。UCLAが出した特例で、まだ学生の身ながら日本の私立龍ノ宮大学で文系学問の講師を勤める破目になってしまった。 普段着は黒い喪服、トライアンフのROCKET(Over2000ccの化け物サイズ)を駆り、巨大な神姫収容トランク所持する。背丈が極めて低めなのが悩みだが実はトランジスターグラマー。最近は白いワンピースを着たりしておしゃれもするらしい。 やや男勝りな自信家。冷淡でやや狡猾で何を考えているのか分かりにくい。慇懃無礼そうに見えるが礼を尽くす相手にはきちんとした態度は取る。 アメリカでは神姫BMAに認定された違法神姫の調査官で、彼女の所持する神姫達は恐ろしい程に高い戦闘力を有する。 <神姫> ●『烈風』(Reppuu) Type-Dog ミラが所有する神姫。汎用・特殊戦闘特化。 こげ茶の髪と赤く光る目が特徴。素体は肌の部分がやや白めで少し筋肉質。 情緒不安定でやや破綻した性格な上に毒舌。 腹が立ったり気に入らない事があれば近くのものを蹴っ飛ばす悪い癖がある。が、人間のマナーの悪さから来る憤りもあり、UCLAではBruins(ブルーインズ)の番犬とも呼ばれている。 戦闘スタイルは割と基本的だがやや力任せな感がある。また空中戦が上手い。だが、相手の神姫やオーナーに罵声を浴びせたり、相手の武装を奪ったり、弱った相手に試合終了判定されるギリギリまで加虐したり、悪質なフィニッシュで決めたりと、多くの神姫やオーナーから嫌われている。 震電の冷淡な性格が気に食わないらしく大いに嫌っているが、禁断の関係の連山には何だかんだ言って甘えている。小言や説教が多いエステラが大の苦手。 『ふぅ、もうめんどくさいからチャッチャとくたばってくれる?』 ●『震電』(Shinden) Type-Devil ミラが所有する二体目の神姫。遠距離強行戦闘特化。 常にゴーグルを付けている為、瞳の色は不明。髪と素体は藍色に近い。原型に比べやや細身。 偶にミラの命令を無視したり、冷徹すぎて相手に悪い印象を与える程度。それでも、他の2体よりも遥かに良識的である。また銃器に関してうるさいところがある。 障害物に身を隠しての遠距離からの超精密射撃や、専用ユニット”フレスヴェルグ”を駆ってのミサイル爆撃・十字砲火・強行突撃が多いが、中~近距離でのアルヴォLP4の二丁拳銃で戦うスタイルが定着している。因みに嘗て、『ガ○=○タ』をマスターしたメジャークラスの神姫を、赤子の手を捻るように叩きのめした事があり、『ガ○=○タ』を完全否定している……つもりなのだが、拳銃を使った格闘がそれに近くなっていることに薄々感付いている。 ある秘密兵器を『ヘキサ』のラルフと一緒に共同制作しているとか。 絶対に口にはしないが、烈風の事はそれなりに信頼している様子。連山は笑顔と笑い声が鬱陶しくて嫌っている。『ヘキサ』の店長のラルフとは、オーダーやカスタム銃を共同制作する程に気が合っている。 『動くと撃つ、止まっても撃つ。抗うなら終わりにする』 ●『連山』(Renzan) Type-Santa ミラが所有する三体目の神姫。超近接高速戦闘特化。 金色の瞳を持つが常にニコニコ笑っている為、確認出来ない。素体は無駄に豊満でやや赤黒い。ストッキングではなくガーターベルトを付けておりより黒めの色合い。 どんな時でも楽しそうに笑っており、天真爛漫で無邪気で何を考えているか分からない。一日の殆どはクレイドルで眠っている為、烈風は『眠り姫』と呼んでいる。不謹慎な夢を見ていることが多いとか。 何故か射撃戦闘はまるでダメだが白兵戦能力だけは驚異的に高く、意外にも超高速戦闘にも長けている。また、レーザーやビーム兵器の発射角度を見て避ける程の反応力と運動能力を持つ。その外神姫としてはありえない怪力を発揮する事も可能。 自分が気に入った相手には積極的にくっつきたがり、気に入った相手なら神姫も人間も皆が大好き。『シラギク』とは厳しい師弟の関係で流石に頭が上がらず、べたべたくっついたりはしない。 『あははは。君、意外と強いんだね!』 ●『シーミュー』(Seamew) Type-Shinobi 神姫ショップ『ヘキサ』のオーナーであるラルフの神姫で、少し珍しい忍者タイプである。 基本的に忠実だがちゃっかりした一面もある。そんなところでラルフとかなり気が合う良き合方。 無表情な忍者型MMSに店番をやらせても看板娘にはならないので、一時代理や裏方活動や怪しい客の見張りをやらせているらしい。 どんなお客様が相手でも常に平等だが、自分達の神姫にも容赦ないミラには少し恐れつつも、内面では目的の為に強く生きているその姿に憧れている。震電とは同じ職場(?)仲間。 『偶に来るんですよね、御自分の神姫のスペックを考えないオーナーさんって』 ●『アムリタ』(Amrita) Medical-Specification Nurse-TypeMMS 神姫の新たな実用性を見出し、医療活動及びそのアシスタントとして開発された神姫。 既存の医療用ロボットには無い人間臭さと、武装神姫をベースとした事の有効性をテストする為に開発され、11体が加州L.A.聖サンタモニカ病院に導入された。 医療活動における判断力が求められる為にオーナーと言う概念がなく、集団のアムリタの意思統合により役割分担やその時に適した行動が決められる。また、コアユニット・CSC・素体は単一である。 通常状態は基本的な医学知識がプログラミングされており、三種の医療用パックを換装する事でそのパックにプリセットされているデータを一時的に使用する。(通常時に於ける記憶視野の拡張とコスト削減の為) 尚、名前は一般名称であり、基本的に個々に割り当てられたIDで呼ばれる。 通常の神姫とは開発思想も構造も異なり、医療機関の要求に合わせた受注生産となる為、1体だけでも医療用精密機械並み(推定:140万ドル)の価格を誇る。また、厳密的には神姫ではなく医療用機器に分類される為、世間一般への販売は禁じられている。 ●『パンドラ』(Pandora) Type-Angel ミラにとって初めての神姫。本編未登場(?)。 嘗ては米・オフィシャルバトルのマスタークラス8位、2396戦2396勝0敗と言う脅威の記録を打ち立てたという。 『METEOR』と言う会社の懸賞に当たった神姫で、オリジナルパーツや部品などで固められており、一般的な天使型MMSの性能を遥かに凌駕するものと思われる。 数年前のとある事件により現在は行方不明。出所不明な情報筋によれば、『神となった神姫』と言われているらしいが……?
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/452.html
第一間幕。ライト点灯。 そこは応接間か、一人掛けのソファが置かれており、その前に立つマコト。その頭の上にフェスタ。 学生服姿のマコトの頭の上でクルクルっと回り、仰々しく一礼するフェスタ。 先程とは髪型が違い、そのボディスーツはパールとグラスグリーン。際どいラインでカットされ、頭には銀のカチューシャ。 フェスタ「皆さん、はじめまして。フェスタです。『2036の風』第一幕をお読みくださってありがとうございます」 マコト「こんにちわ。フェスタのオーナーのマコトです」 マコト、一礼してソファに着席。 フェスタ、マコトの肩を経由して膝に移動。 フェスタ「改めまして自己紹介を。私はフェスタ。MMSタイプ『アーンヴァル』です」 マコト「アーンヴァルタイプ、初期ロットだったよね」 フェスタ「うん。武装神姫シリーズの発売日にマコトのママさんが買ってくれたんだよね」 ふと、フェスタが首を傾げる。 フェスタ「・・・そういえば、どうしてマコトがマスターになったの?」 マコト「まぁ、色々あったんだよ」 マコト、苦笑。 ふーん、と納得したような顔をしてフェスタ気にしない事にしたようだ。 フェスタ「今回のお話は、まだ姉さんや妹達とも会ってない頃の私。今の脚をお母さんから貰った時」 マコト「二月だったかな・・・荒んでたよね、フェスタ」 フェスタ「うん、ごめんごめん。・・・けど、嬉しかったな」 マコト「そうだね」 スポットライト消灯。ワイドライトがステージ全体を照らす。 マコト「・・・『2036の風』は長編じゃなくて『ショート集』。一幕ごとに主役となる神姫が変わるタイプ」 フェスタ「次の幕は誰のお話になるのかな・・・? 私の出番はどうなるのかなぁ? もう無いとかはヤだな」 マコト「大丈夫だと思うよ。ほら、フェスタ達は・・・」 フェスタ「・・・! うん!」 マコトの言葉に嬉しそうに頷くフェスタ。 ライト、少し暗く。 フェスタ、肩に移動。 フェスタ「・・・『意志』。はっきりとした心。譲りたくない思い」 マコト「それを示す為に・・・フェスタは、お母さんから脚を貰ったんだよね」 フェスタ「うん・・・歩き続けたい。踊り続けたい。この脚で・・・大切な心と一緒に」 フェスタ、愛しげに自分の腿に手をやる。 マコト、優しくそれを見つめていたが、やがて。こちらに目を向けた。 マコト「『2036の風』は神姫の『心』をメインワードとした、ショート集です」 フェスタ「CSCはプログラムを打ち込んだデータボックスなだけ・・・なのかな?」 マコト「・・・CSCは人工の産物。結局は人が作り出したデータを膨大に投入した・・・人が作り出したパーツ。人が作り出した身体。人が作り出したヘッドコア」 フェスタ「じゃぁ、神姫の『心』は『人が全て作っている』の?」 マコト「フェスタは、どう思う・・・?」 フェスタ「・・・」 風一つ。 マコト「・・・。公式で記された一行足らずの「神姫の心」というワード。たったそれだけを軸にしたストーリー『2036の風』」 フェスタ「この拙い作品、最後までお付き合い下されば幸いです」 二人、礼。 更にライト暗く。 フェスタ「次幕は姉さんが登場するね」 マコト「うん。オレ達がまだ知らない時の、ね」 フェスタ「んー・・・やっぱり・・・なのかなぁ?」 マコト「・・・(汗)」 ライト消灯。第一幕、了。 2036の風
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1357.html
貴女はまるで、童話の中の御姫様。 伏せられた瞳に動かない唇。 そんな貴女を見ながら、まだ起きない貴女を思い描く。 貴女は、花の様に笑い、風のように走るのかしら。 貴女は、月の様に佇み、影のように寄り添うのかしら。 貴女は、海の様に優しく、山のように大らかなのかしら。 貴女は、優しく微笑む天使かしら。 貴女は、意地悪く笑う悪魔かしら。 朝は私を起こしてくれるのかしら、それとも私が起こすのかしら。 ご飯を一緒に食べられるかしら、一緒に洗いものも出来るかしら。 私と一緒にお出かけ出来るかしら、一緒に買いも出来るかしら。 貴女は、こんな私を笑うかしら? まだ見ぬ貴女、まだ出会えぬ貴女。 そんな貴女を思い描く私を、笑うかしら。 馬鹿な主だと、愚かな主だと笑うかしら。 でも、良いわ。 貴女と笑って暮らせるのなら。 「お初にお目にかかる。私の識別名はエウクランテ。貴女が私の主であろうか?」 部屋の真ん中に置かれたテーブルの上で、彼女は言った。 一人用のテーブルの上でもなお、その小ささが目立つ彼女は当然人では無い。 武装神姫。 人類の科学の結晶、慎重15cmにして人と同じ外見と、人と同じ心持った機械仕掛けの御姫様。 「そうよ、私が貴女の主? になるの」 絨毯に直に腰を下した私と、彼女の目線にはやはり差がある。 テーブルの分を差し引いても、まだまだ彼女の方が低い。 「それでは主、僭越ながら主の名を聞かせて頂けるだろうか?」 貴女は至極冷静に振舞っているけれど、時折視線が部屋中に飛ぶのを私は見逃さない。 本棚、机、ぬいぐるみ。 どれもが初めて見るものばかりなのだろう。 それを考え、これからを考えると自然と笑みが浮かんでくる。 「私の名前は加奈美。戸坂加奈美よ」 私の笑みに釣られたのか、貴女もようやく笑ってくれた、 とても機械とは思えない。自然で和やかな微笑。 「加奈美……か。とても良い名だ、主。それでは私にも名を与えてはくれないだろうか?」 小首を傾げる動作も、とても機械には見えない。 その全てが新鮮で、愛おしくて、私は不思議な気持ちで貴女の為に考えた、貴女だけの名を呼ぶ。 「……シルフィ、それが貴女の名前よ」 それを聞いた瞬間の貴女の顔は、本当に嬉しそうで、幸せそうで。 私も釣られて嬉しくなるような、素敵な笑顔。 「素晴らしき名だ、主。感謝する」 これから始まる貴女と私の生活。 大きな事件も、胸躍る冒険もいらない。 ただ流れる毎日に、身を委ねて楽しみたい。 「これからよろしくね、シルフィ」 「こちらこそ、主」 先頭へ 次へ -
https://w.atwiki.jp/corazones/pages/70.html
スペシャル海戦イベント カリブ海賊 ~夏のバカンス「欧州進撃」~ 詳細 公式 wiki えっと、よーするに・・・ 8月22日(日)18:00~19:45 8月28日(土)20:00~21:45 の、2回にわたって、アゾレスらへんで海事イベントがあるもよう。 (つか、イベント自体ゎずーとやってるんだけど、この特定の日時の時に戦功が5倍なる) 参加希望者の数にもよるけど、以下の変態 編隊を計画ちぅw 8月22日(日)18:00~19:45 Lv関係なく、みんな混ざってワイワイやる 8月28日(土)20:00~21:45 戦功重視チームと、のほほんチームに分かれてやる 今んとこ、錫ちゃん、たろちゃん、ウェスカちゃん、MOちゃん、Rioja ※↑↑↑↑やってみた感じ、敵強くないから、チーム分けなくてもだいじょぶかもw↑↑↑※ 参加希望者 参加ご希望の方わ、↓こちら↓にキャラ名、参加日、海事Lvをご記入を! または、ゲム内で りおは まで。 28日(土)のほほんチーム参加希望 海事Lv32 -- 錫の子 (2010-08-16 04 27 31) 28日(土)どちらのチームでも良いです、海事Lv70 -- 移香斎 (2010-08-17 01 37 17) 28日(土)は予定が入ったので欠席で。迷ってる人は参加してみよう。日本鎧が手に入るだけのポイント稼げると思うよ。 -- すけまる (2010-08-24 00 16 51) 28日 のほほんチームで(^_^) 海事Lv25 -- tarot70 (2010-08-26 14 08 48) 28 -- 名無しさん (2010-08-26 16 35 16) いこさん不参加、ウェスカちゃん・MOちゃん・Rioja参加、 -- りおは (2010-08-26 23 16 55) 別キャラKAZUで参加しますLV31 -- MOchan (2010-08-28 18 24 16) 名前 コメント ▲上に戻る▲
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2514.html
不良娘と放課後のディスカッション 世の中はオセロのような物だ。 片やが立てば片やは減り続ける、そうして四隅を取られて敗北を待つ。 コマを回収するときを静かに待ち続けるしかないんだ。 負けてたまるか、諦めてたまるか そう思い続けた日々は無意味と帰して… 「そうして哀れ私はこうして肉体労働に準じるしかないのね…よよよ」 「おい神奈、余計な口を動かしとランでこっちの資料もいらないから縛って置いてくれ あとそれからそこの教材と此処の参考書ももういらないから棄てるように。それから…」 「は~いはいはい、私の手は何本に見えます?二本ですよ!」 少女は無意味なモノローグを途中で切られた事にムッとして、半ば剥げた教員に文句を返す。 少女は特徴的なウェーブのかかった長髪をしており 流行りの小ぶりなバイオメタルフレームの眼鏡をかけていて それが逆にスタイリッシュなファッションとなっている…所謂美少女である。 しかしその手には軍手、そして首にはタオルをかけておりやや埃にまみれたその姿はアシンメトリーな違和感を感じさせた。 「今これゴミに出すんでもうちょっと待ってくださいよっと…急かす男性は幾つになってもモテませんよん♪」 余計な御世話だ!!という怒号を背に聞き終える前に扉を脚で閉める。 そして重い荷物を両手に木造の渡り廊下を歩く。 珍しい?確かにこんなご時世だ、そう感じるのも無理は無いだろう。 戸叶第三高校…通称戸叶三校。 都内におけるごく有り触れた3流高校であり、未だ木造の校舎が残っていると言う奇特な学校である。 なんでも21世紀初頭にごく一部で古き良き建築方式を残そうという運動があったらしく 当時の新技術であった圧縮技術によってできた強化木材によって最新のバイオセラミックに勝らずとも劣らない強度と頑丈さを兼ね備えているのだとか。 しかし所詮木材は木材、腐食菌達の30年間にわたる努力の甲斐あって、強固な木材もやがては腐食する運命を辿る事の証明に細菌どもは成功したのである。 それがどうしたと言われるだろうが此処からが問題で、雨が降ったりすると雨漏りが結構酷いのだ。 そして彼女、神奈 流の回収したテスト用紙に丁度狙い澄ましたかのように雨漏りが降り注いで来た事によって素敵なまでに答えが消えてしまったのだ。 通常は、ここで再試験の申し揉みを出せば先生はもれなくOKサインを出すだろう。 しかし彼女の場合は勝手が違った、授業の抜け出しに授業中の居眠りなど常習犯 果ては成績の良さとそれに寄り学校の平均偏差値をあげているのも彼女なのだからか堂々とそれらを行うのだから教員としては腹立たしい問題児の中の問題児 それが神奈 流の教員たちによる評価である。 つまり再試験していい代わりに、雑用だけでもやってもらうぞと言う事だ。 ちなみに再試験は既に終了しており教師も真っ青になる程の好成績を叩きだしている。 「しっかし何でまたゴミ捨てかしらねぇ~、こんなの男子にでもやらせりゃいいのに… まったく、私みたいにガッツのある野郎はいないのか嘆かわしい」 実際昨今のスポーツ事情から言っても、社会の中での男性の立場の崩落は未だ大きい物である。 何故ならば男子の運動離れと、筋肉や中身を磨くより外観を磨こうという努力にばかり目が行く者や 20世紀末から繁殖を始めたゲームやパソコンオタクと言った分化系の大量発生―といっても著者や神奈自身はそれを否定する事は無いが― パッと見ではそうそう問題ではないが、男子の体育離れ…即ちなよなよしい男子を大量生産するようなご時世と言う事だ。 しかし…そんなこのご時世でも奇特な人間と言うのは居るもので 「よう、手伝おうか?」 通りかかった部室の前に腰かけた男が神奈に話しかける。 ツンツン頭で如何にも前世紀では漫画の主人公のような頭をしている男はただ神奈を見かけただけなのだろう、それがどんな状態に有るかも知る由もない 彼がそんなお人よしである上に外見に見合わずそれなりに筋肉のついている男だと言う事も神奈は知っていた。 なぜなら彼は神奈が所属する部の部長だからである。 「頼むわ、ちょっと数学のあのハゲの準備室で教材とか色々あるからねん♡」 「え”…わ、わかった。男に二言はねぇ!!」 一瞬固まった、それ程に数学教師の階戸教員はなかなかに面倒くさい人間と言う事が知れ渡っているからだ。 しかし男はガッツポーズをとってその場から数学準備室へと足を運ぼうとする。 それこそがなんでも気合と根性とごり押しで物事を解決する男、元サッカー部主将にして武装神姫部部長の蘆田 阿頼耶である。 明らかに生まれる時代を間違えているこの男。 ふと神奈は蘆田を呼びとめた、もちろん頼んだ事を中止する気は無い。聴きたい事があったからだ。 「蘆田部長ー、部長の神姫はどったの~?」 「んん?今丁度部室内の掃除中だ、丁度部屋から追い出されちまった所だよ」 神姫…それは2041年現在、あまりにも当たり前に人々の日常に溶け込んだ汎用人型フィギュアサイズロボットである。 身長15センチ程度のボディにCSCシステムに寄る人工的な感情と魂をほぼ完全に再現した最新の人工知能を搭載 またボディに汎用的なパーツを搭載する事でほぼ無限とも言える多機能性を見せる―これを武装とも言い、後述の名の由来にもなっている― まさに、人類が生み出した理想的なパートナーと言えるだろう。 そして一部の人々はその神姫に思い思いの文字通り武装―武器や鎧、あるいは技術をありったけ積み込んだ超小型軽量化バトルモービルもしくは同左パワードスーツ等々前述の通り種類は無限である― を装備させ、あるものは自らが司令塔となって、或いは神姫と一つになって、小さなサイズの戦いを繰り広げる遊びが流行していた。 それを神姫バトル、そして主人と共にその戦いに身を投じる神姫達を人々は武装神姫と呼んだ。 「しかし…当たり前に浸透してるって言う割にはバカ高いのよねぇ」 「仕方ないさ、俺だってバイトの退職金と兄貴の残した神姫ポイントがなけりゃ二体も買えなかったしな」 流石元運動部員と言うか、もう神奈に追いついてきた蘆田と学校外の歩道を、荷物運びをしながら受け答えする。 ため息をついてゴミ捨て場へとたどり着く。古い学校だから景観を壊したくないという理由でゴミ回収場所も後者から結構遠い道の端なのだ。 「あぁもう、今日は私だってバイトの予定もキャンセルしたのよ!!なんだってこんな金にもならないボランティアをする為に…くっそう、21世紀初頭の活動団体を呪いたいいぃ!!」 「一体何を言ってんだお前は…」 ため息をつきながら蘆田は神奈に振り向く。 「そういえば、神奈はそろそろ神姫買う予定なのか?」 「いや全然?」 蘆田は意外な事にすっぱりと切り捨てられる問いに顔をしかめる。 それもその筈、神奈は神姫に対する知識が非常に深い。 本人は詳しい武装紳士・淑女で無くとも神姫ヲタならだれでも知っている事というが 実際戸叶三高神姫部の神姫達の武装は殆ど神奈がチューンナップしているのだ。 深いなんてものじゃない、明らかに何か経験を積んだのだろう。 しかし、その辺の事は蘆田は深く聞き出すつもりは無い、お互い過去は無意味なことと知っているからだ。 「まぁ部長だってサッカー部全員が女にうつつを抜かしててる中、極度の初心なもんだから凄く居づらくなったんで、せめて女性恐怖症を治すために神姫始めたんでしょ♪」 「ぐ!!それは今関係ないだろうが!!」 まぁ彼の過去の場合、もう殆ど払しょくできているから伏線にする必要もないのだが… やがてようやくゴミ捨て場へとたどり着いた二人はどさどさとゴミを置く。 「しかし何でだ、普段からお前うちの神姫達ともよく関わってるし神姫が嫌いな訳でもないんだろう?それこそうちの部費で買ったっていいんだ、金の事なんてそんなに気にする事でもないだろう?」 「…整理がつかないのよね、気持ちの問題と言うかね…なかなかどうして、私に共感できる子が欲しくてね」 そりゃ無理だ、と蘆田は正直にため息をついた。 神奈程の変人は中々居ない、神奈と関わった者ならだれでもそう思うし神奈本人もそう思うだろう。 しかし…ふと神奈は其処に捨ててあった赤い光を偶然視界に入れた。 「…………あぁ、前言撤回するわ」 「・・・は?」 神奈の突然の意趣返しに蘆田は戸惑いの声を上げる。 すると神奈は粗大ごみの中から伸びる『手』を握って、ずるりと引き上げた。 千切れたコードが絡まり、埃で汚れ、力無く手脚をぶら提げた身長15センチ程度の少女が神奈の掌に乗せられた。 「部長、ちょっと部室のクレイドルとパソコン借りるわよ」 「お、おい?」 「私はこの子の思い出を育ててみたいのよ♪」 トップ 続き
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2797.html
『天才ファーストランカー・黒野白太の謎』 読者は黒野白太を御存じだろうか。 先々月、神姫バトル界の頂点のファーストリーグに十四という若年神姫マスターがその名を連ねた衝撃はまだ耳に新しい。武装の性能に頼らず的確に相手の心理を読むセンスを以て神姫バトル界の最前線に立つ天才マスター。それが黒野白太であり、彼のバトルに憧れを抱く神姫オーナーは少なくはない。私のオーナーもその内の一人だ。 しかし名声を手にした代償としてか、数ヶ月前、そのバトルに関わる悪い噂が流れ始めた。観客によれば黒野白太は自分の神姫に全く指示を出していないらしい。 マスターはただ神姫に適切な武装を送るだけの貯蔵庫ではなく、第三の眼として戦場全体を俯瞰した上で指示を出し神姫を勝利へ導く重要な役割を持つ。黒野白太はそれをしない、にも関わらずファーストランカーとなったのはどういう事なのか。 多数の同証言者が出た事から真実を帯びたものとして神姫ネットを騒がせ、一時期は「黒野白太は違法改造した神姫で成り上がった卑怯者」「武装神姫の世界から追放すべき」と訴える過激な声もあった程だ。 このような騒動に対してオフィシャルは彼に神姫に精密な検査を行った上で違法改造の痕跡は無いことを発表している。そして黒野白太も自身のブログでバトル中に言葉を発していないのは事実であると認めた上で合理化の為に簡単な合図だけでも指示が出せるようにしていると言い残している(尚、現在ブログは閉鎖されている)。 現在では彼を擁護するマスターも現れており批難の声は潜みつつあるが風評被害を怖れてか黒野白太は神姫バトルに対して消極的になっている。人の噂も七十五日、噂が完全に消えたその時にはまた我々の前に姿を現わして欲しいものだ。 …。 …。 …。 「先月号では私達を散々批難していたくせに見事なまでの掌返しだな」 「ライターが変わっているんだよ。ほら、これを書いたのはムルメルティアだって」 お昼休み、昼食を摂り終えた僕達は立ち入り禁止の屋上で武装神姫関係の雑誌を読んでいた。 イシュタルは文字が進む毎に不機嫌になっているけれど雑誌から目を離さない。たかがゴシップと割り切っているけれど、この記事が自分達の周囲にどのような影響を与えるかをしっかりと吟味しなければならない。そんなことを考えているんだろう。 僕としては早く今週の神姫グラビア(今週はナース服!)を見たいんだけど中々それを切り出せない。かといって不真面目な態度を見せると怒られるから悩み腐っているような振りだけはしておく。グラウンドで爽やかに体を動かしている体育会系の男子達がちょっと羨ましい。 「好転はしているんじゃないかな。擁護的な記事だし。後は書いてある通り時間が過ぎるのを待つだけだよ」 「それは分かっている。しかし焚きつけておいて火消しは時間の流れに任せるとは余りに無責任だと思わないか」 「仕方ないんじゃない? 僕としては学校に武装神姫を知ってる奴が少なかっただけでも大助かりだし」 居ないわけじゃないけれど全員気の良い友人で僕のことを表立って叩く奴は居ない。御蔭で被害は神姫センターに行けなくなる程度の被害で済んだ。 「マスター、君は本当にそれで納得しているのか。もっと良い解決方法があったのではないか?」 「いや、これは本当に諦めるしかないって。悪いイメージを払拭するのは手間と時間が掛るって色んな人も言ってたじゃない」 水を得た魚ならぬ大義名分を得た人間。それを目の当たりにした御蔭で割り切れるようになってしまった。イシュタルの方はそれでも納得が行かなくて、もしくは飲み込もうとして不具合を起こしているのか、唸っている。 「それに、そうやって他人を馬鹿にするのは決まって程度の低い連中じゃないか」 「マスター…、しかし、それでも私は…」 平気で他人を馬鹿に出来る辺り僕も悪だな―とか思いつつも。 「…そう、だな。得る物はあったと考えるべきか」 「そうそう。何時でも何処でもポジティブであるべきだよ。人の上に立つ立場なら尚更ね」 「いい言葉だ。最後の一文さえ無ければだが」 「え、あ、ごめん。嫌味のつもりじゃなかったんだんだけど」 皮肉に聞こえたみたいだ。この失言を誤魔化す為にストラーフの水色の頭を人差し指で撫でる。 「わっ、こらっ、何をするっ、恥ずかしい」 「いやぁ、イシュタルの頭って時々撫でたくなるんだよねぇ。なんでだろ」 「私が知るかっ。やめろっ」 「良いではないか、良いではないかぁ」 「良くない!」 ガーッと大きく口を開けて威嚇しながら人差し指から逃れるイシュタル。 普通の神姫はマスターに頭を撫でられると喜ぶもの。数週間前にこの事実を知った時に僕を襲った衝撃は計り知れない。その例外曰く自分は母親の代わりをやってきたものだから僕に撫でられるのは何だか恥ずかしいらしい。 でも「嫌よ」と言われはい「そうですか」と諦めるようじゃ真の武装紳士とは言えないよね。だから親指で逃げる頭を追い掛ける。 「イシュタルの頭撫で撫で」 「止めろと言っているだろう!」 「嫌よ嫌よも好きの内」 「止めないと本気で怒るぞ!」 「だが断「Wasshoi!」グワーッ! 指が、指がーッ!」 わ、忘れていた、照れ隠しでロボット三原則を破るイシュタルの爆発力を! 「でも指は酷いよぅ…まだ授業は残ってるんだし…」 「全く。だから小指にしておいた。ほら、指をテーピングして固定するよりも先にすべきことはないか?」 「え、なにそれ。被害者面してアヘ顔ダブルピース要求する気満々だったんだけど」 「悪い事をしたら御免なさいと謝る。昔よく言い聞かせていただろう。ほら」 「だが断「もう一本逝くか」ごめんなさい、もうしません、ってぇ、何で謝ったのにやるのかにゃぁ!?」 「これは人として当然のことを忘れていた罰だ」 「理不尽な…」 負傷してる理由を尋ねられたら「転んだら両手の小指がイカれました」で通るかな。通すけど。怒っていたイシュタルを馬鹿にしたのは僕だから罰は甘んじて受け容れなくちゃならない。いやいや、やだなにこの糞真面目思考。ここにもイシュタル教育の影響が見えたような気がして自分自身が恐ろしくなってくる。 それよりも一秒でも早く雑誌のページを進めなければ。今月の神姫グラビア(ナース!ナース!)が楽しみで昨日は眠れなかったんだ。これ以上待たされたら午後の授業は内容が頭の中に入らなくなるだろう。ナース服に栄光あれ。 「ん、マスター、ページを捲る手が早くないか」 「気になるような見出しは無かったし別にいいじゃない」 「もしやと思うが、目的は如何わしい衣装を着た神姫のページか」 「そうだけど?」 「…もう少し恥じらいというものを持ったらどうだ」 イシュタルは呆れながらも捲ろうとしていたページの上に圧し掛かって胡坐を組んだ。目に見えて分かる不動の意思の現れは無視すれば後々が面倒になる事を雄弁しておりナース服の為とは言え軽視するのは流石に躊躇った。 「どいてくれないかな。僕はその先に用が有るんだ」 「断る。いかがわしい物など百害有って一利無し。見た者の心が堕落するだけだ」 「健全な中学生がいかがわしいものに興味を持つのは大自然の摂理だよ」 「よく聞く理屈だな。だがその欲望を断ち切ってこそ人は成長するのではないか?」 「それは違うよ! 欲望もまた自分の一部、否定しちゃ駄目だ。欲望と理性の折り合いを付けられるようになることこそが本当の意味で成長したって言えるんじゃないかな」 「むっ…、それはそうだ」 「むしろ今のイシュタルにみたいに、あれは駄目これも駄目これにしなさいあれをしなさいとか言って選択の自由を奪うのは自立する意思を奪っていることと同じだよ」 「むむむっ…、だが私は御両親の代理として不健全なものをマスターから遠ざける責任がある!」 うわ、大人専用対子供最終兵器・責任だ。じゃあこちらも子供専用対大人最終兵器を使っちゃおう。 「……」 「どうだ、分かったか。ならば早くその手を離して…」 「今月号の奴は本当に楽しみにしていたんです。だからお願いです、見せて下さい」 「わっ、わっ、泣く程か!? 泣く程楽しみにしていたのか!?」 「何でもします。だから見せて下さい。全部見せろとは言いませんから、お願いします、お願いします、お願いします」 「分かった、一ページだけなら特別に許すから、ほら、もう泣き止んで。…まったく、これでは私がマスターを虐めたみたいじゃないか」 「ありがとう、イシュタル!」 計画通り。堂々と今週はナース服特集の神姫グラビアへのページへと指を掛けた。そしてそこに開かれたのは正に楽園の扉。ナース服によるナース服の為のナース服の世界。鼻唄を歌いながらそれを眺め頭の中では色取り取りのナース服を思い浮かべる。 読めるのが一ページだけなのは辛いけれどイシュタルが譲渡してくれたんだから割り切ろう。それに一ページ目で写っていたのがナース服を着ているストラーフだったのが良かった。やっぱり褐色に白い服は良く似合う。 「…ふぅ」 「全く、こんなもののどこがいいのか私には理解出来ない」 「今僕は自分が裸エプロンになっても構わないくらい気分が盛り上がっているんだけどね」 「辞めてくれ。そんなことしたら私は家を出ていくからな」 「ははっ、やらないよ。エプロン無いし」 「有ったらやるのか…まぁいい。しかし十五センチの身体に欲情すると言うのは人間として不健全じゃないか?」 「イシュタル、君は何を言っているかな(↑)」 その発言は「アニメのキャラってただの絵じゃん」に匹敵する破壊力を持っていた。下手に爆発させれば僕達は全世界の武装紳士を敵に回しかねないのでそのマスターとしてクールに処理しよう。…あれ、何でだろう、目から汗が湧いてきた。 「あのね(↑)、武装紳士は神姫がなくちゃ生きていられない身体になっているんだ(↑)。もう神姫の声しか聞こえない(↑)。だから神姫に欲情するのは当然の事なんだよ(↑)」 「意味不明な事を言うな。そも有名なマスターの大抵は人間の女性と付き合っているじゃないか。しかも美人と」 「それ以上はいけないなぁ(↑)。それにしても、あいつらは理人さんに全裸で土下座するべきだと思うんだ(↑)」 「沖縄旅行で一人ぼっちという理人の人間性に問題があるような気がするが」 「僕はぼっちじゃない(↑)」 「マスターのことは言っていない。それよりもさっきから声が上擦っているが、一体どうしたんだ?」 駄目だ。さっきから自分で何を言っているか分からない。でも負けない。武装紳士として生きる道を選んだことに後悔なんてあるはずない。うちはうち、他所は他所だ。彼女持ちのマスターなんて羨ましくも何とも思わない、僕達には神姫が居るのだから。それにしてもクリスマスの日に空からイチャついてるカップルを目掛けて空から赤い服着た小太りのおっさんが降って来ないかな―。屋上からクリスマス衣装のカー○ルおじさんを落とすくらいなら出来るかも。 クリスマス撲滅計画は後々に考えるとして。先ずは心の傷を癒そうと次のページに捲ろうとした指を止められる。さりげない流れで行けたと思ったんだけど甘かったようだ。 「一ページだけだ。それ以上は認めない。そう言っただろう」 「残念無念」 「そろそろチャイムが鳴る。屋上の鍵は私が閉めておくからマスターは雑誌を片付けて教室に向かえ」 「後一ページだけでも見せてくれないかな」 「くどい。こんな物に見惚れている暇があったら学生の本分に励むべきだ」 「ナース服に比べたら授業一つなんて大したものでもないでしょ」 「…私は一体何処でマスターの教育を間違えたんだろう」 珍しくイシュタルが落ち込んでいる。そんな姿は見たくないなぁ。落ち込ませたのは僕なんだけど。 「あのねイシュタル、教育者が子供に完璧を求める必要は無いんだよ」 「子供が何を言っている」 「これだからゆとり世代は、て決まり文句が有るじゃない。あれ。僕は可笑しいと思うんだ。ゆとり世代なのに出来る奴にも同じ事を言えるのかって。違うでしょ、土曜日が休日になってもそうじゃなくとも出来る奴は出来るんだ。ゆとり教育は出来る奴と出来ない奴の格差を広げただけ。じゃあ出来る奴と出来ない奴の大きな違いって何だと思う?」 「…、才能か?」 「正解。出来る奴は嫌でも辛くても難しくても苦しくても逃げ出したくても出来る。何故かって、それが出来る才能があるから」 「それはそうだが…、努力を怠ってはいけないだろう」 「努力も才能の内だよ。当たり前に努力が出来る才能を育ててあげるのが正しい教育って奴じゃないか無いかな。だから僕は感謝してる。もしもイシュタルに出会わなかったら、僕は何の努力も出来ない引きこもりになっていた」 これは本心だ。僕の両親は典型的な会社人間だから。 「話は逸れたけど要するに人は完璧であるのではなく自然であるべきなんだよ。僕は自然と意味も無く勉強をして運動をして信頼が出来る。それは教育者として立派な成功だよ。僕は君と出会えてよかったって胸を張れて生きていける」 「マスター…、め、面と向かって感謝されると、なんだか照れるな」 「だからさ、落ち込まないで。それに人も神姫もナース服も万能じゃない。努力が報われないことだってある。仕方ない事だってある。僕がナース服フェチになったのは仕方が無いこと。授業よりもナース服を優先するのは自然なことなんだ」 「…、何故そこでナース服を強調するんだ?」 「そこにナース服が有るから(キリッ)」 「カッコ良く決めたつもりか愚か者がぁぁぁぁっ! 薬指を貰うぞぉおおお!」 「え、両方? ちょ、やめて、僕、結婚指輪付けられない身体になっちゃ…アーッ!」 ま、失ったものは多かったけれど。 薬指を組みつかれた隙を突いて神姫グラビアの二ページ目、ナース服のアーンヴァルを見れたから僕は幸せだ。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/635.html
第四間幕。ライト点灯。 夕焼けを思わせるオレンジ色のライトが広がる。大型バイクに跨るコウと、その肩に仁王立ちしているボタン。 ボタンのスーツは赤と白に変わっており、腰には赤い紐で鈴が吊るされている。 ボタン「初めてお目にかかる諸兄。2036の風、第四幕を読んで頂き光栄の極み。アタシの名はボタン。犬型武装神姫、タイプ・ハウリンだ」 コウ「ここで偉そうにふんぞり返っている一々五月蝿いバカ犬の飼い主。宮井 孝。コウでいい。カメラマンをやっている」 ボタン「ふふん、誰がバカ犬か。バカ主め」 ボタン、ひらりと飛び降りてバイクのハンドルに着地。 ボタン「紹介しておこうかな。我らが身を預けるこやつの事も」 コウ「・・・」 ボタン「今回出番が少なかったが、鉄牛『クロームバイソン』タイプ電動バイク。ヘビー級なヤツだ」 コウ「意味がわからん説明だな。2007年あたりで言う所、『アメリカンタイプ』といえば解りやすいか」 ボタン「こやつもまたコウの相棒、パートナー。さすればアタシの兄弟姉妹みたいなものだ!」 コウ「両方五月蠅い事には変わりないか」 手を広げて呆れたように言うコウ。ニヒヒと笑ってみせるボタン。 コウ「・・・墓参りって事は、五月の連休だったか。連れてけ連れてけと・・・」 ボタン「気にするな主! ・・・そうだな、高速の渋滞をアメリカンで路肩を突っ走った記憶がある」 コウ「まぁ・・・。ホントは連れて行く予定はなかったんだがな。ジイちゃんも連れて来いって五月蝿いし」 ボタン「良いではないか」 コウ「サービスエリアに止まる度に、あれがすごいこれが珍しいと騒ぎまくりやがって」 ボタン「良いではないか!」 コウ「何が良いんだ、バカ犬」 相変わらず笑うボタンに、溜息を吐くコウ。 ライト、少し暗く。しかしよりオレンジに。 ボタン「・・・。神姫が死んだら、何処に行くか・・・か」 コウ「バカバカしい新興宗教みたいだな」 切って落とすコウに、ボタン苦笑。 ボタン「流石と言えば流石だが。全くミもフタも無いなぁ、主」 コウ「で? ・・・どっかに行かせたいのか? お前ら」 ボタン「行かせたいワケがあるまい。今幕でも・・・そして角姉の幕でも少し語られたように」 風、一つ。 ボタン「何処にも行かぬよ。我らは。我らも人も」 コウ「・・・」 ボタン「何処にも、行かぬ。だから母上も・・・」 ボタン、自らの手を開き、天に翳す。 ボタン「此処におるのだ」 コウ「・・・あぁ」 ライト、更に暗く。 コウ「さて、次の週末は何処まで撮りに行くか」 ボタン「おお、主。そういえば角姉の所に行ってみたいぞ」 コウ「何でよ」 ボタン「久方ぶりに『四人』が揃うとの事だからな」 コウ「・・・あぁ? アレも来てんのか」 ボタン「うむ、大会の・・・」 ライト消灯。響く機動音。 第四幕。了。 2036の風
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2241.html
第十五話:生贄姫 俺と蒼貴、そして日暮に注目される彼女が近づいてくる。胸ポケットには大した傷もないヒルダが入っており、この様子だと あの後のバーグラーを彼女は難なく倒したくれたらしい。 「緑か。すまん。さっきは助かった」 「気にするな。私達の仲だろう?」 「か、勘違いされそうな事を言うんじゃねぇよ!」 「おや、真那の方がいいのか? 根暗は明るい子の方が好みという事か……」 「あのなぁ……」 再会して早々の問題発言に俺は頭を抱えた。真那といい、縁といいどうしてこうも女というのはからかうのが好きなのだろうか。付き合わされるこちらの身にもなっていただきたい。 「ふふふ……。まぁ、お前をからかうのは後で楽しむとして本題だ。あのバーグラー共から情報を吐かせたぞ」 「マジか?」 「ああ。それも面倒くさそうなのをな」 笑った後の本題に俺はすぐに先ほどの悩みを隅に追いやって、尋ねる。 「端的に言えば小遣い稼ぎさ。資金に困った研究者によるものだ」 「研究者って義肢のだな?」 「そうだ。お前も情報を集めていたという事か。となれば情報交換といかないか?」 「ああ。それが一番早い」 「その話、僕にも聞かせてくれないかい?」 「尊、彼は?」 「正義の味方らしい」 「は?」 話に割り込んでくる日暮を端的に紹介すると、あまりにも直球過ぎたのか冷静沈着な縁も唖然とした。『正義の味方』という言葉は彼女の中では化石並みに古い言葉の様だ。 その反応を見た日暮は俺と変わらぬ反応でやはり笑う。そういった反応にはなれているのだろうか。 「言葉の通りさ。力になれると思うんだけどいいかい?」 「僕は構いませんよ。個人ではきつい話ですしね」 「尊がいいなら、信用しましょう」 「OK。じゃ、ちょっと店裏まで付いてきてくれ。僕も同時進行で調査するからさ」 日暮に促された俺と縁は互いの情報を交換し、その情報から情報収集をしてくれた彼と共に話を整理を始めた。 事の起こりは義肢研究の行き詰まりと国からの資金援助の期限が迫り、ついには切れてしまった事にあった。 義肢研究に関しては何もそこだけが行っているわけではない。その研究には多くの研究者達が参加しており、こぞって成果を出し、援助を求めようとしている。 あの義肢研究者もまた、その一人だ。成果を上げて資金援助を得ていたのだという。しかし、俺の聞いた話の通り、研究は行き詰まってしまい、資金援助が打ち切られてしまったのだ。 当然、障害者施設の収入程度では義肢という規模の大きい分野の研究費など賄えるはずがない。 このままでは義肢研究者は資金不足によって、研究を進められなくなってしまう。 そこで彼が思いついたのはその研究の課程で得られたリミッター解放技術であった。 神姫の出力で人間の四肢という大きなものを動かす事は出来ないため、必然的により大きな出力を引き出さなくてはならない。故に初めは違法パーツ……神姫の規格から外れているパーツで組んでいたらしい。出力の方も神姫に直接操作する関係上、リミッターの外し方などを独自に研究、使用していた。 その研究を応用し、俺達が遭遇した神姫達が付けていたイリーガルマインドに似せたリミッター解放装置を開発して、さらに障害者用の盲導神姫もイリーガルとして改造し、裏でバーグラー達にそれらを横流ししていたらしい。 紅麗というリミッター解除装置を付けた神姫の所属しているバーグラー達から聞いた情報では裏サイトで仲介者から買い取ったと言っており、その裏サイトのアドレスを日暮が普通はしてはいけない様な方法で調べるとそこにはかなりの高額で取引されている事を証明するページがあった。 イリーガルマインドに似せたあの違法パーツが様々なバリエーションで用意されており、強力であればあるほど高額になっているラインナップだった。 そのレートは数千円である場合もあれば、数万円の場合もある。強弱や能力のばらつきがあれど、その力は使った神姫を死に至らしめる程強力なのは共通している。 さらにあろう事かバトルロンドのシステムに引っかからない様に調整された違法改造用のキットやイリーガル神姫までもを直接斡旋していた。 「己のために神姫を喰い潰すか……」 「人の性ってやつかもしれんな……」 緑の言う通り、人を助けるはずの義肢研究も少し道を外すだけで力に溺れさせる死の商人と成り果てるとは皮肉である。 自分の研究を続けるためというシンプルな考えであるはずなのに課程を間違えるだけでこれだけ堕ちてしまうとは人とは恐ろしいものである。 「何にしてもこいつはまずいな。このままだと、ここ周辺でイリーガルが大量発生しかねない」 日暮も危険を唱える。 イリーガルに成りきるだけではなく、それを作り出せるとあってはそれを知った人間はこぞってそれを買っていくだろう。密売を始めてまだ間もない感があるが、このままではバトルロンドがそうした違法神姫達が横行する事に成りかねない。 「自分らで何とかできる話ですかね?」 「その辺は心配ない。情報収集や操作でどうにでもなるからね。ただ……」 「ただ?」 「証拠がない。君たちの言う研究者に突きつけるための動かぬ証拠がね」 「このページやバーグラーの発言では足りないって事ですか」 「ああ。ページは誰か別の奴が作っているだろうし、バーグラー達は直接あの研究者から買い取ったってわけでもないだろうからね。せめてそれを見ている施設内部の神姫がいればいいんだけど……」 「でもそれは巻き添えでその施設が閉鎖される可能性があるのでは? そのために黙るとかあり得ると思うのですが……」 「確かにそう考えられるかもね。まぁ、その辺は可能な限り頑張ってみるよ。それより証拠のアテは何か知らないかな?」 それを聞いて俺は考える。あの施設の中で最も都合のいい立場にいる人間を頭の中から取捨選択して、残るのは……。 「輝と石火だな。だが……」 彼らならば顔が通っており、なおかつ石火の索敵によるカメラ映像情報を持っている可能性がある。 彼女の目はどんな些細なものも見逃さない千里眼にも等しき目だ。何かしらの情報を掴んでいるかもしれない。 とはいえ、そうであるかどうかには不安が残る。そもそも石火がそれを見ていないというのもあるが、彼らがグルである、或いは見てしまって口止めされているなど、障害になりえるシチュエーションはかなりある。 「それでもそいつに聞くしか手段は思いつかないのだろう?」 「……まぁな」 緑の言う通り、現状で有効な手はそれぐらいしかない。 石火が見ていた場合の情報の信頼性としては、石火の整備は施設では全く行われてはおらず、専属技師である親友がやっている可能性が非常に高いという事だ。これは施設による石火のデータ改竄されている可能性が極めて低い事を意味している。仮に不都合な情報があったとしてもそれが消えることはない。 また、施設の研究者も輝という名前が全国に知れ渡っている故に石火に、そのマスターの輝にも迂闊な事はできない。仮にそんな事をした場合、真っ先に疑われるのは彼らなのだから。 「なら、決まりのようだね。輝の事なら僕も耳にしているよ。彼は全国大会の最初のチャンピオンでその専属技師の友人も技術面では結構、有名だ。交渉は慎重にやった方がいい」 「わかってますよ。必要なら僕が憎まれ役を買いますし」 「随分と大胆な事を考えるね。だからこそやれるとも思えるけど」 「それが彼なんですよ」 「なんだそりゃ?」 「それは自分で考えろ。その方が面白い」 緑の突然の言葉に頭の中に疑問符が浮かんでくる。彼女に聞いてもあしらわれ、その謎を自分で考えてもあまりピンとはこない。 「考えてもわからん……」 そういう事に行き着いてしまう。 「まぁ、気長にな。で、そいつはどこにいるんだ?」 「神姫センターだ。行けばまた会えるだろう」 話題変わって輝の場所だが、俺はただ会っただけだ。輝から携帯電話番号を教えてもらったわけではなく、単に会って話し合っていたに過ぎない。 そこで連絡先でも聞いておけばと後悔もできたが、今更そうしても仕方の無い話だ。 「なら、そこで探すしかないな。とは言っても盲目自体珍しい。難しくはないだろう」 「ああ。後は引き込める上手い言葉を探しておくさ。根性論なんか押し付けたくねぇしな」 「それもそうだな。だが、彼らは正しいと思うから間違うかもしれんぞ?」 その通りだった。いくらそれが正しい事であったとしてもそれが納得できる事と同義であるわけではない。 自分のルールにそぐわないものは自分が変わらない限り、それは障害以外の何者でもないのである。 この事実を輝が受け入れるか、拒否するか、逃げるか、俺達にはわからない。確かなのは…… 「その時は……その時だ」 それだけだ。 「……そうか」 「ワリィ。それほど器用じゃないんでな」 「わかっているさ。その時になっても後悔はするなよ?」 「ああ」 「話は決まったかい?」 「ええ。僕が何とかします」 話が一区切り付いてきた所で声をかけてくる日暮にやる事を伝える。 可能な限り早い日に輝には俺が情報を持ちかけて説得をかけ、彼に協力を取り付け、石火の視覚データから違法神姫に関する証拠映像を手に入れて、それを証拠とするという事だ。 解決策に関してはイリーガルマインドを解析しているであろう杉原に話を聞き、それがわかり次第、その方面の行動も展開していく。 日暮との連携も考えて、杉原には彼の事を伝え、協力して事に当たってもらうものとする。上手くいけばあの義肢研究者を足がかりに彼に連なる違法ブローカーも芋づる式で捕まえられるだろう。 「わかった。僕は君が話をつける前に段取りを整えておくよ」 「それでは僕はこれで。紫貴もそろそろ直っている頃でしょうしね」 「あ。また、パーツに困ったら買い物にでも来てくれ」 「ええ。そうします」 自動ドアを出て、修理が終わったであろう紫貴を迎えに歩きだした後で、俺はため息をつく。 確かに計画としてはいい。だが、輝と石火がこの話をどう思うか、借りに信じたとして自分の世話になった場所を潰す事になるかもしれない事をどう思うか、全く予想が出来ない。 当然、心苦しい事になる。これからどうするかもわからなくなるだろう。だからといって俺が責任をとるために導いてやれるなんて馬鹿げた話は無理だ。そこまで自惚れる脳みそをしちゃいない。相手にこれからを委ねるが精一杯だ。 「カッコつけておいて、やる事は他人任せか……」 自嘲的にそれらをまとめる。交渉事なぞ所詮はそういうもののはずだがやはり煮え切らないものがある。 「オーナー……」 「わかってる。やるだけやってみせるさ。あっちが恨もうがな」 「自分だけで背負わないで下さい……。私や紫貴だって背負います。それに私達が悪い訳ではないはずです。いつまでもあのままならもっと傷つきますから……」 「そのはずだよな……」 引き金を引くのは俺だが、と続けようとしたがこれ以上は泥沼になるため、止めた。 蒼貴が元気付けようとしているのにそれを無碍にするのは悪い。 そんな陰欝な雰囲気で歩いているとコンビニを通り掛かった。そういえばあの戦いの前から何も飲んでいない。色々と起こりすぎて喉がカラカラなのを忘れていた。 そんな訳で俺はコンビニに飲み物を買いに入る。コンビニの中には店員と少数の客しかおらず、並ぶ事なく会計を済ませられそうだ。 詮無い事を考えながら、雑誌の並ぶ雑誌コーナーを進む。そこで週刊バトルロンドの最新刊が目に入った。どうやら丁度今日が発売日だったらしい。 俺は何気なくそれを手に取り、それを開く。 「こいつは……」 バトルロンド・ダイジェスト最新号の表紙には『特集:~ 絆 ~ 武装神姫はなんのために戦うのか?』というあまりにも規模の大きいタイトルと見た事のないタイプの神姫と『アーンヴァル・クイーン』の異名を持つランカー 雪華が写った写真で大きく飾られていた。 自他共に厳しく接し、高尚なる戦いを求める彼女の事は神姫センターで別のランカーを薙払っているのを俺も見て、知っている。そんな雪華が誰かに優しく、ましてや抱くなどという事をさせた泣いている神姫は一体何者なのだろうか。 俺は興味を持ち、雑誌を開く。表紙の内容は巻中のカラーページに特集として大々的に描かれていた。 最初はバトルの詳細な解説が主な内容だ。雪華はいつもの飛行装備、泣いている神姫……ティアというらしい神姫はランドスピナーというモーター駆動のローラーブレードと拳銃やナイフで戦っていたらしい。 ティアといえば元風俗神姫だったらしい事を噂で耳にしたことがあった。しょうもない奴が経歴を言いふらしてけなすだけのどうでもいい話だと思っていたが、まさかこうなるとはこれを見るまでは予想もしていなかった。 さらにそれを読み進めると信じられない事が書かれてあった。なんとティアは雪華最大の必殺技を回避し、その挙げ句彼女の武器を奪って戦ったらしい。 大した度胸と執念だ。ティアのオーナーとは会えればいい話ができそうな気がする。 戦いの末、ティアは倒れ、試合の形式的には敗北したらしいが、雪華は敗北を認めたという。 そんな試合があったとはそれを直に見られなかったのが非常に残念だ。面白い戦いはどうにも俺の外で行われているらしい。いつかセンターを飛んで回ってみたいものだ。 その戦いの記録の後は「武装神姫はなんのために戦うのか」というタイトル通りの問題提起になっていた。 雪華を初めとするランカー神姫が思い思いのコメントをその記事に刻んであり、 「人は武装神姫を戦わせる。それは名声のため、お金のため、バトルの楽しさであるかも知れない。 戦わせる理由はマスターによって様々だ。しかし、神姫にとって、戦う理由は皆同じだ。マスターの望みを叶えるために戦っている。 もう一度振り返ってみて欲しい。神姫は何を思い、なぜ戦うのか。 自分はなぜ、自分のパートナーを戦わせているのか、を」 それらがそう結ばれていた。その主となる言葉は「マスターのために」だ。その言葉を恥ずかしげもなく、彼女たちは言えている。 呆れるほど単純なその言葉には計り知れない想いが詰まっていることだろう。 その後の特集は、絆を思い起こさせる、過去の名勝負のダイジェストが紹介されていたが、必要なことを知った俺は雑誌を閉じ、それを持ってコーラと一緒に会計を済ませて、外を出た。 「人も神姫もそこまで弱くはない、か……」 ティアの話は、絆は自分達が思うよりずっと堅く、支えになる事を教えてくれた。 俺と蒼貴と紫貴だって、そういう絆があってここまで来たのはよくわかっているつもりだ。輝と石火の絆だってそうであるはずだ。……いや、時間が長い分、俺達よりも堅いはずだ。 「こういうのを潰しちまいたかぁねぇな……」 戦いの場をイリーガルから守るというご大層な名目を掲げる気は無い。ただ、こういう絆を感じさせる戦いが無くなるのは気に入らない。 武装神姫が何のために戦うのか。それは言うまでも無く、マスターのためである。これは雑誌の通りだし、大抵のマスターも理解しているだろう。 が、そのマスターが狂えば従っている神姫はどうなる。少なくともそれまでの関係には戻れなくなってしまう。それもまたつまらない話だ。 「あいつらの絆に賭けてみるか……。どんな結果になろうが……な」 別に主役を張る気は無い。が、見て見ぬ振りをするつもりもない。 俺はティアやそのオーナーの様に戦えないかもしれないが、自分の筋は通す。それぐらいはできてもいいはずだ。 「なぁ。蒼貴」 「はい」 「俺、イチオーナーとして頑張ってみるわ。付き合ってくれるか?」 「その言葉は紫貴と一緒にお聞かせください」 「……そうだったな。あいつを迎えに行こう」 「はい」 そう胸に決めると俺は蒼貴と共にカルロスの喫茶店に預けた紫貴を引き取りにコーラを飲みながら歩いていく。 やるだけ、やってみるか…… 戻る -進む
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/81.html
武装神姫のリン 番外編 「リンの某日の記録」 私の名前はリン。 武装神姫「TYPE DEVIL STRARF」です。 今日は休日でしたがマスターは臨時のお仕事で朝早くから出かけてしまいました。 しかもティアは定期点検(違法ドーピングの後遺症の検査で昨夜からセンターにいます) なので私は今日一人で過ごさなければなりません、しかも今日は公式大会の日でサーバーがメンテナンス(マスター曰く公式大会は有名ランカー目当てでユーザー以外の観客も含め、会場に人があつまるため、アクセス数が激減するらしくメンテナンスには絶好のタイミングだそうです)されるので訓練用のデータの配信が行われません。 現存のデータで訓練を行うことも出来ますが私はすでにPCに保存されている全てのパターンをコンプリートしてしまい、物足りないのです。 かと言って私一人ではゴーストのデータも接近戦に偏ってしまうため、課題の遠距離戦の練習にはならないのです。 ということで私は今日1日をのんびりと過ごす事に決めました。 まず私はTVの電源を入れました。そして最新作品から過去の名作まで、アニメーションを随時放送しているチャンネルに切り替えます。 するとそこには以前のイベントの時に貰ったマントを羽織り、あの可変式の武器を持った金髪の少女が戦っている映像が映し出されました。 番組表を見ると「魔法少女リリカ○なのはA's」と書かれています。 その少女は武器を変形させます。 すると黒い突起から金色の光の刃が出現しました。 その武器はまるで死神の鎌の様です。 そして彼女は瞬時に加速、相手の剣士(こちらも女性でした)の裏を取り、切りつけます。でも相手は剣の鞘でソレを受けて反撃しています。 『魔法少女』というタイトルからは想像できない激しい肉弾戦に私は目を奪われ、最初はバトルの参考になるかも?と思っていた見ていた私ですが、次第に物語も気になり始め結局最後の最後まで見続けてしまいました。 最後のエンディングにそって成長した彼女たちが歩く映像を見ているうちに私はあの武器とマントを付けてみたいと思いました。 クローゼットからマントを引っ張り出し、可変式の武器(完全変形の上、あの光の刃までもが再現されています。リアルバトルにも対応と説明書には書かれていました。) しかもパッケージをよく見るとあの少女の衣装までセットになってました。 マスターは見落としていたみたいです。 あの様な露出の激しい衣装は恥ずかしいのですが、今は私一人なので勇気を出してみました。 サイズはぴったりで仮に私の髪が金なら彼女にかなり近づいているはずです。 黒を基本にベルトと白いフリルでアクセントを加えられた、とても動きやすいものでした。 鎌形態の武器を構え、私は見よう見まねで鎌を振り下ろしてみました。 シュンという風切り音が静かな部屋に響き、私の目の前にあったアルミ缶は真っ二つになりました。 切れ味はすばらしく、これならアーンヴァルのライトセイバーにも引けを取らないと感じました。マスターが帰宅したら真っ先に進言したいと思います。 次に私が試したのはあの、マスターが私に隠していた小説のキャラクターのドレス。 話の内容はともかく、ドレスは気にいってたので袖を通してみました。 とても豪奢なドレスは着るだけでどこかのお姫様になった様に感じさせてくれます。 しかし、一緒に入っているのは三つ叉の鞭のみ。物語の主人公の魔界のプリンセスが持ち主というだけあって過激な武器です。 さっきの空き缶に向かって鞭を振ります。 缶の表面にはくっきりと鞭の先端の形のへこみができました。 こんなにも痛そうな武器(実際のダメージの度合いというよりは私の心の問題です。)は使いたくありません。 でも、時々この部屋に出没する黒色の侵入者を狩るための有効な手だてとなりそうだったので保管しておくことに決めました。 そうして試着を終えた私は、あの小説を読んでみることにしました。 俗に言う官能小説の一種ですがドレスを来ているうちになんとなく気になってしまいました。 そして自分とほぼ同じ大きさの文庫をセカンドアームで棚から引き出し、読んでみました。 最初はふつうのファンタジーでしたが途中から雰囲気が変わります。 胸やお尻といった身体のさまざま場所を触られ、艶のある声をあげる主人公。 ふと私は自らの胸を触ってみました。 確かに私たち武装神姫は人とほぼ同じ触覚を持っていますが、私たちからすれば女性が身体を触られるだけなのに何故これほどの反応をするのか理解できなかったのです。 でも小説に書かれているように胸に手を這わすうちに、身体の中心が熱くなるような感覚を覚えました。 しだいに心地よい感覚が体中に広がっていきます。 そして私は遂に神姫には倫理上再現されない秘部に手を伸ばし、あるはずのない亀裂に指を這わせ、少し強く擦ってみました。 その瞬間頭部の回路にとても強い信号が流れ、私はある種の幸福感に満たされました。 「マスター、ハァ…ハァ。マス…っ………タァ」 そうして、気がつくと私は激しく身体をくねらせながら自慰(小説内で説明されていました)に浸っていたのです。 自分が自分でなくなるような不思議な感覚に包まれ、最後にはマスターの顔を思い浮かべながら意識を失ってしまいました。 目を覚ましたのはもう空が茜色にそまる夕暮れ時。 こんな時間にまで意識を失うとは・・・・と思っていたところに。 「お・姉・さ・ま?」 私が背後に目を向けるとソコにはセンターにいるはずのティアが立っていました。 「お姉さま一人で・・・・ズルぃ」 そうし熱の篭った瞳で私を見つめるといきなり私に覆いかぶさって、まだ敏感になっている私の乳房を舐め始めました。 「ひゃ…うぅ」 「あら、お姉さまって敏感なのですね。 カワイイ☆」 そうして次は私の耳にやさしく噛み付くと、右手でお尻、左手で乳房を愛撫し始めました。 「ああ…テ…ィア。 ダメ…だっ……ぅて」 「まだまだですわ、ここからが本番ですわよ。お姉さま」 そうしてどんどん愛撫する手の動きが激しくなり私の頭の中は星で埋め尽くされていきます。 がくがくと手足が震えだし、焦点が定まりません。 そして、あの幸福感が迫ってくるのが分かります。 「コレで、、、、、終わりですわ!!!」 ティアの右手が私の秘部に手を伸ばし、秘芽を指でピンと弾いた瞬間、私はまた気を失ってしまいました。 再び目を覚ました私の目の前にあったのはティアの秘部。そうして私が覚醒したことを確認するとすぐにティアは私の顔に秘部を押し付け、私の秘部をその桃色の舌でもてあそびます。 「ふぅ…お姉さま、今度は私も攻めてください」 そうして私にも同じことを要求します。 もう私はなにがなんだか分からなくなって、言われるがまま、ティアの秘部に舌を当てます。 「はァァァ 、そうお姉さま。もっともっと私を弄ってください。」 そうして一心不乱にティアの秘部を蹂躙します。そうするとティアも仕返しとばかりに私の秘部を優しく甘噛みしてきます。 それから数分が経ち、こういった刺激にやっと身体が慣れたのか、頭が少し冷静になりました。 そして先ほどのリベンジを開始します。 小説にあった手法でゆっくりと内股を指でなでてやり、またお尻にも舌を這わせます。 だんだんとティアの反応が大きくなってきました。 「あれ…お姉さま。 急にお上手に・・ぅんあ!!」 いきなりティアの身体が反り返りました。どうやら私の攻めが効いてきたみたいです。 ここぞとばかりに股間に頭をうずめて秘芽を攻め立てます。 指でこねくり、舌でゆっくりと刺激を加えて仕返しに弾いてやります。 「ソレ、ソレですお姉さま。 もっとください。」 ティアは全身に汗(実質は冷却液)と涙、そして大きく開けた口からよだれをたらしたまま私に懇願します。 「ティアももっとして。貴女が始めたんだから」 私は人が代わったかのような命令口調で言います。やっぱり私は今興奮したままみたいです。 そうしてそのまま身体を反転。 ティアに正面から抱きつくような姿勢で互いの唇、乳房、股間を押し付け、こすり付けます。 ティアも脚を絡めて私に応えます。 「お姉さま!お姉さまぁん! イッちゃう、イッチャいますぅ!!!」 「まだよ、我慢して。そうじゃないとやめちゃうんだから」 「え、ダメダメダメ!! 我慢しますからお願い!!」 私も体液を全身に噴出させながらティアと絡み合います。 秘芽がこすれるごとに私もさっきの幸福感-絶頂へと近づきます。 「ティア、もう少し。もう少しよ、私も…イきそう」 「もうだめ、もうだめダメ、もうだへでふ、おねへさまぁう!!!」 「ティア、私もだ……ふゅうん」 もう2人は言葉を交しません。 もうお互い後がありませんでした。 私はさっきまで背負っていたのをわすれていた、セカンドアームの鋭い指先で自分と、ティアの秘部に触れました。 「うぁぁはぁぁあぁ!!」 「く、きゅぅぅうう!!」 そうして私達はまどろみに沈んでいきました。 覚醒したのは私が先。 でもさっきまでの自分の言動や行動が自分でも理解不能です。 あんなに「攻め」ちゃうなんて。 自分自身でもソレを思い出すと身体が疼くためそれはやめました。その後はシャワーを浴びて、まだ眠っているティアの身体を蒸しタオルでふいてあげて、ベッドに寝かせた後は片付けをしなければいけませんでした。 なんと、いろんな物的証拠をすべて処理し終わった1分後にマスターが帰宅したのです、後少し対処が遅れれば危なかったです。 あんあはしたない行為の跡をマスターに目撃されなくて良かったという安堵も束の間。 知らない間に起き上がったティアがマスターに耳打ちしようとしているではありませんか。 私は恥をしのんでアームユニットで壁を押し、そのまま「隼」を華麗にティアに決めていました。 もちろんそのあとマスターに質問されましたが、なんとか真相は解明されずにすみました。 でもティアには以前よりもっと私になついた(マスターによればたまに、服従してるように見えるとか……)みたいです。 とりあえずこんな感じで私とティア、2人だけの秘密が出来ました。 マスターにこれが知られれば、絶対に嫌われてしまう。 「この秘密だけはなんとしても死守しないと」 そう誓ったあの夜、でもそれが私の思い違いと分かったのはもっと後のことでした。 燐の7 「ティアVSジャンヌ」